日本語学校三世代から見た、コロナの今をどう乗り越えるか 〜過去を振り返り、未来の日本語教育業界について考える〜 セミナーレポート<パート1>
4月22日(木)Linc主催セミナー「日本語学校三世代から見た、コロナの今をどう乗り越えるか〜過去を振り返り、未来の日本語教育業界について考える〜」を開催しました。
今回も、先月に引き続きオフライン、オンラインでのハイブリッド開催となり、オフラインでは日頃お付き合いのある日本語学校の先生方8名、発表者3名を招待し、オンラインでは62名、合計73名の方にご参加いただきました。
このセミナーのレポートを2回に分けてお届けします。
今回は【パート①】
①アカデミーオブランゲージアーツ 西村副校長
②与野学院日本語学校 谷校長
次回、【パート②】
③カナン国際教育学院 木下理事長
の発表内容についてご紹介致します。
■テーマ①:アカデミーオブランゲージアーツ 西村副校長
テクハラの対象にもならないアナログ世代が経験してきた過去・現在
〜未経験の今後をどう生き伸びるのか〜
■1.不法残留5年半減計画の実施
2004年から政府の方針で、不法残留の人数の増加により「不法残留5年半減計画」という対策を始め、日本語学校にとって大きな影響をもたらしました。特に中国の学生に対し、厳しい交付率が下されました。
2007年からは、東京入管では学力のある学生に対して審査が通りやすくなるという話が学校間で飛び回り、通常の申請時より多い人数で申し出たものの、それは単なる噂でしかなかったことが発覚しました。同年、中国「高考成績」等の認証制度もスタートしました。
2008年10月からは、6月の在留期限の交付が半減計画年を越えるため、交付率が上昇していきました。そして、同年12月には「不法残留5年半減計画」が終了しました。
※「就学生」・・・日本語学校で勉強している学生のこと。
「留学生」・・・専門学校や大学で勉強している学生のこと。現在は「留学生」に統一されています。
■2.東日本大震災・福島原発事故
2011年3月、東日本大震災及び福島原発事故が発生しました。発生後、在校生の帰国や同年4月期生の入学辞退、7月期生申請キャンセルが相次ぎました。
(上記画像参照)募集困難ではあったものの、10月期以降には少しずつ申請数も回復し、一年後には平常に戻りました。
震災から1年後の2012年には、留学生30万人計画に向けての動きに合わせて交付率も上昇、新規校の増加、既存校の定員増加申請、留学生18万人来日という結果でした。その頃から学校ごとの格差も出始め、仲介手数料の上昇傾向が目立ち始めました。
そして2017年には、留学生30万人計画が達成されましたが、その一方で東京入管ではネパール、ミャンマー、スリランカ、バングラデシュの審査が厳しくなり、2018年には入出金疑義ありという理由で、この四か国の交付率がほぼ0という苦境に立ち入りました。
■3.新型コロナウイルス発生
2020年1月期生の入国後、学生募集や新規入国に大きな陰りを見せたのが、「新型コロナウイルス」の世界的流行です。2020年4月期生が予定通り入国及び入学が出来ず、入国の目処も立たない状況になり、学校としてもその対応方法に追われました。2020年4月〜5月には緊急事態宣言も発令され、休校措置やオンライン授業を開始する学校が出てきました。
2020年10月〜入国制限が緩和され、PCR検査証明および2週間の隔離期間を必須とした入国が認められ、42,748人の留学生が来日しました。しかし、2回目の緊急事態宣言により再びの入国制限、そして今だに入国制限緩和の目処は立つ事もなく、現地募集も出来ず学生募集も苦労していく一方です。
■テーマ②:与野学院日本語学校 谷校長
日本語学校三世代から見た、コロナの今をどう乗り越えるか
■1.グラフから読み取る過去の出来事
谷校長先生からは、日本語教育機関数の推移のグラフ(画像左参照)から、日本語教育業界の歴史を振り返っていただきました。
赤い部分は、学校数の増減が目立ちますが、これは入管からの審査が厳格化及び弛緩されていた時期によるものです。留学生10万人達成後は、入管での審査が再び厳格化され、更にはリーマンショックなどの出来事に見舞われますが、留学生30万人計画スタートより、機関数は右肩上がりで増えていきました。
昨年までの外国人留学生在籍状況を表したグラフを見てみますと、(画像右参照)現在は新型コロナウイルスの影響で学生数は減ってはいますが過去に起きた出来事(東日本大震災等)の影響で学生数が大幅に減ったことはないことがわかります。
■2.コロナにどう立ち向かっていくか
「新型コロナウイルス流行」による日本語教育機関への影響は、過去最大の危機とされています。(上記画像参照)
1日も早く、入国制限緩和が望まれていますが、現時点でできる対策として、下記の点が挙げられます。
・来日マインドが冷えていない国への営業強化
・留学生以外への日本語教育(技能実習生、家族滞在ビザ、児童生徒)
・現地へのオンライン教育
・待機学生へのオンライン授業
水面下では、資本力のあるところが学校を買収する動きも出始めています。
大資本のある学校では、大規模予算を投下しての新規コンテンツ開発、広告宣伝に力を入れています。
では、中小規模、零細資本はどう対抗していくのか?
安価なプラットフォームを利用して、コンテンツで勝負または、他校とコラボレーションすることでコンテンツ強化をはかっていくことです。
与野学院日本語学校では現在、待機学生に対する有料オンライン双方向授業の実施 (4/12から一部の学生)と、待機学生に対する無料オンデマンド講座配信+オンライン上での定着テスト(週2回)を実施予定で進めています。また、今後取り組みたいこととして、下記の5点を挙げています。
1.営業面では、出口企業との連携の拡大・強化
2.募集は、有料オンライン授業でもお金を払ってくれやすい層にシフトしたい
3.他校とのコンテンツ連携強化
4.関連業種とのコラボ
5.生産性向上のための改善
ここまでお読みいただきありがとうございました。
※次回はカナン国際教育学院 理事長 木下沢威氏の発表内容をセミナー実施レポート(パート②)を配信します。
■最後に
今回もセミナー終了後には、弊社のオフィスにて参加者同士のオフライン交流会を行い、各学校での情報交換を行いました。
コロナウイルス感染拡大が早く落ち着くことを願い、より大規模の日本語学校のオフライン交流会を開催したいと考えております。感染状況が落ち着き次第、参加者規模を拡大し、交流会を企画いたしますので、ぜひご参加ください。
来月以降もセミナーを企画中ですので、ご期待ください!
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■株式会社Lincについて
Lincではインバウンド・タレントの「日本に来て良かった」を最大化させることで多様性と包容力溢れる社会の実現というビジョンを掲げております。少子高齢化という、抗えない大きな波が押し寄せてくる日本において、優秀なインバウンド・タレントの増加は日本という国の持続的発展に必要不可欠だと我々は確信しています。そのために私たちはお客様のニーズに応えるべく、常にユーザーである学生や日本語学校をサポートすることによって信頼関係を構築してまいりました。またLincはこれまで投資家から累計2億円近くの資金調達を完了しており、この話題が日本経済新聞にも掲載されました。
(※参考 日本経済新聞掲載記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58522900X20C20A4XY0000/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26848240T10C18A2XY0000/
会社概要等、詳しくはLinc公式ホームページをご確認ください。
https://www.linc-info.com/