ICT活用による日本語教育現場の効率化と学びの場の自由化 〜コロナ禍のオンライン授業の振り返りと2022の展望〜 ウェビナーレポート <パート1>
1月26日(水)Linc主催ウェビナー【ICT活用による日本語教育現場の効率化と学びの場の自由化〜コロナ禍のオンライン授業の振り返りと2022の展望〜】を開催しました。
今回は、日頃お付き合いのある日本語学校の先生方の内、過去最多となる合計151名からお申込み頂き、当日は合計130名(オンライン:117名、オフライン:Lincのオフィスにて13名)にご参加頂きました!
今回はこのセミナーのレポートを2回に分けてお届けします。前半では、東京中央日本語学院 生方哲男氏の発表内容についてご紹介致します。
■今回ウェビナーテーマの背景と目的
今回で3回目となるICT教育のテーマですが、なぜここまでICT教育が注目されているのか?
その答えは実施背景にございます。
<背景>
①社会的背景の変化:
・近年、知識・情報・技術をめぐる変化の速さが加速度的となり、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて進展するようになってきている。
②教育の情報化:
・IT技術の進化による時間的・空間的制約を超え、双方向性を有する、カスタマイズを容易にするといった特長を生かして、情報教育・ICTの活用による教育成果アップ・学生管理の情報化による教育の質向上と効率化を目指している。
これらの背景を踏まえ、今回のウェビナーの実施目的は、下記の通りです。
①日本語教育ICT化のことについて情報を収集し、IT技術を活用する重要性に対して理解を深めるため
②他校より今まで取り組んできた先進事例を共有されることで自校の取り組みを振り返って、問題点及び解決策を見つけるため
③今後の日本語教育におけるICT化を進めていくためのアイディア出しや意見交換ができるため
■日本語学校におけるICT教育の重要性とその課題
1.新しい教育手法を取り入れることで業務効率化及び学習効果アップのシナジー効果の期待
・属人的な授業から脱出し、価値最大化を目指し、一度作ったコンテンツをいかに活用するか
・教えて終わりでなく、学生の理解度及び学んだ知識を活用できるかをチェックしながら教授法を磨いていく
2.ICT先進国からの来日学生の増加
・中国をはじめ、アジア圏では今後日本よりICT化が進むとされている
・日本としてもそれに順応していく必要がある
3.学生募集のブランディングの1つの手段
・オンラインネイティブの若者に対して、ICT教育を取り入れている学校は
魅力的であり、他校との差別化を図るための手段の1つとして有効
Lincの考えとして、日本語学校がICT教育を取り入れることの重要性として3つ上げさせていただきました。しかし、ICT教育導入もすぐに成功するとは限りません。そこで、Lincと普段お付き合いのある日本語学校さんからは、下記のような課題の意見を伺いました。(下記スライド参照)
重要性、課題をお伝えした上で、新型コロナウイルス流行後より積極的にICT教育に取り組まれ、今後のICT活用についてのお考えを持っている2名の先生方をお呼びし、お話しいただきました。
・ヒューマンアカデミー株式会社 遠山大輔 氏
・東京中央日本語学院 生方哲男 氏
■ゲスト①:東京中央日本語学院 生方哲男 氏
■発表テーマ:
学習者の日本語能力を伸ばすためのオンライン教育
〜ウィズコロナにおけるオンライン教育のファインディングス〜
1.高いCX実現のためにICT/オンライン活用は重要
東京中央日本語学院でICT教育に関して目指しているのは、「オンライン授業は対面の代替ではない。オンラインシステムを活用した教育で学習効率を上げる。」ことであり、今後もオンライン授業は継続して行っていきたいと考えています。
ではなぜそう考えているのか?
例えば日本語学習者、特に非漢字圏地域の留学生が抱える「企業が求める高い日本語力」の課題です。日本での就職のみならず、(非漢字圏学習者を中心として)大学進学ですらも叶えてあげることが出来ないのが、今の日本語教育の現状です。ICT・オンラインを活用した教育を取り入れることにより良い教育成果をもたらすことができるのではないかと考えています。
2.コロナの流行とオンライン授業
東京中央日本語学院で2年間オンライン授業に取り組んだことからICT教育は2つの観点からソリューションとしての有効性を発揮すると考えています。
1.物理的制約を乗り越えるためのソリューション
・オンライン授業
・ハイブリッド
・オンデマンド
2.学習効率向上のためのソリューション
・インプット
・アウトプット
・フィードバック
現在も、オンラインとオフラインのハイブリッド授業を行っていますが、まだまだ課題は山積みです。(下記のスライド参照)
授業の満足度調査のため、定期的に受講生にアンケートを取っております。10ポイント中、全ての項目で8ポイントを超えていることがわかり、受講生も日に日にオンライン授業に順応してきていると思われます。教師の意見としては様々で、意識のズレがあったり、カメラオフで学生の様子がわかりにくいなど、オンラインならではの課題も見受けられました。
3.オンライン・対面の使い分けの考え方
良い学習効率と顧客体験価値を高めるためには、オンライン・対面の使い分けをし、それぞれの強みをいかした学習方法を取り入れることが非常に重要であると考えております。
■オンラインの強み
・ディスカッション型授業
・アセスメント
・一部のアウトプット活動
・(進学指導などでの)フィードバック
例えば、ディスカッション授業では、ZOOMのブレイクアウトセッションルームを活用して行っています。意思疎通を図るために意見交換をし、その際に、自分の考えていることを率直に言い合う場を作るのにブレイクアウトセッションルームは他から遮断できるため適しています。それぞれのチームや個人がどのようなことを言っているのか、考えているのかを知ることでより良いアイデアが生まれることもあります。それに当たっては、スプレッドシートやJam boardなどで先生同士でリアルタイムに共有も可能です。
教師による単一的、画一的な視点ではなく、学習者による複合的、多様性のある視点でフィードバックや意見交換ができます。
■対面の強み
オンラインではカバーしきれない部分が、ここで対面の強みとして発揮されます。それが信頼関係性と場の構築です。継続してオンライン授業を受講していると、学生の学習意欲、モチベーション維持が難しくなります。学習開始時点では高いモチベーションを維持できますが、慣れてくると受講生のモチベーションが下降していきます。モチベーションを維持・向上させていくという観点では対面によるフォローはやはり効果的と言えます(上記スライド参照)
4.まとめ
これからも、オンラインを活用した教育で学習効率と顧客体験価値(CX)を高めていきたいと考えています。具体的には、下記の4つを進めていきたいと思っています。
・社会と顧客のニーズに寄り添う経営・教育の在り方の模索
・さらなるDXの推進
・5Gにより動画を活用した教育環境が整いやすいので積極的に捉えたい
・仮想空間やメタバースなどのトレンドアイテムは、その本質的な役割と価値を見極めたい
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ヒューマンアカデミー株式会社 遠山大輔氏の発表についてはウェビナー実施レポート(PART2)でレポートします。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
※また、まとめサイトへの引用を厳禁いたします。
■過去に実施した「ICT教育」テーマのウェビナーレポート
2020年11月18日実施「日本語学校におけるICT教育の取り組みとその課題」第一弾
https://www.linc-info.com/news/webinar-report-20201126/
2021年3月24日実施「日本語学校におけるICT教育の取り組みとその課題」 第二弾
パート1
https://www.linc-info.com/news/seminar-report-20210330/
パート2
https://www.linc-info.com/news/seminar-report-20210408/
■本件についてのお問い合わせ
①お問い合わせ先:https://www.linc-info.com/contact/
件名に「ICT活用」を記入の上、必要事項を入力してください。 追って当社よりご連絡差し上げます。
②電話でのお問い合わせ:03-6240-2155(株式会社Linc)まで直接お問い合わせください。
ご不明な点等ございましたら遠慮なくお申し付けください。
■株式会社Lincについて
Lincではインバウンド・タレントの「日本に来て良かった」を最大化させることで多様性と包容力溢れる社会の実現というビジョンを掲げております。少子高齢化という、抗えない大きな波が押し寄せてくる日本において、優秀なインバウンド・タレントの増加は日本という国の持続的発展に必要不可欠だと我々は確信しています。そのために私たちはお客様のニーズに応えるべく、常にユーザーである学生や日本語学校をサポートすることによって信頼関係を構築してまいりました。またLincはこれまで投資家から累計2億円近くの資金調達を完了しており、この話題が日本経済新聞にも掲載されました。
(※参考 2021年、18の地方新聞紙面にて、Linc事業活動が掲載されました!)
https://www.linc-info.com/news/211223/
会社概要等、詳しくはLinc公式ホームページをご確認ください
https://www.linc-info.com/