セミナーレポート:外国人材採用の潮目の変化 ~外国人材に選ばれる企業へ~

株式会社Lincは、外食業界の人事の方へ向けて、これからの外国人材採用に向けたセミナーを開催しました。特定技能の求職者との面談やアンケートをもとに講演し、グループディスカッションや懇親会で理解を深めています。本レポートではその内容や、参加した人事担当者同士で生まれた議論の一部を抜粋して記載します。
登壇者
株式会社Linc 執行役員 Career事業部 杉田 純一
【経歴】
・新卒でインテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。人材紹介の法人営業の後、パーソルプロセス&テクノロジーで新組織立ち上げに携わる。
・2018年にパーソルホールディングスへ異動し、外国人材事業の新法人「PERSOL Global Workforce」の設立を主導。法人営業責任者として、企業開拓、アライアンス構築、官公庁への提案、プロジェクト管理、人材育成など多岐にわたる業務を担当。
・2024年7月 株式会社Lincに参画し、グローバル人材マッチングプラットフォーム「Linc Career事業部」の責任者に就任。
・2025年4月 同社 執行役員に就任。
目次
1.はじめに
2.外国人材へのアンケート概要
3.外国人材の本音と建て前
4.転職検討時期について
5.売り手市場へのトレンドの変化
6.特定技能2号試験合格者の転職事情
7.グループディスカッションと懇親会
1.はじめに
本イベントは、外食業界で特定技能2号の急激な拡大が見込まれる中、外国人材の採用・定着支援での最先端を目指すコミュニティ運営を目的に開催されています。
特に外国人材の採用については課題が各企業様の状況によって異なります。
・積極採用をする体制構築における課題
・定着、受入れでの現場調整や離職防止の課題
・過去に失敗し、採用ストップをしている状況での人手不足の課題
・新たに外国人材の採用を始める中での課題
など、状況に応じた課題への対策を立てる必要があります。イベントを定期的に開催する中で、コミュニティ全体での経験・知見を貯めて循環していくことを目指しています。
2. 外国人材へのアンケート概要
セミナーは、外国人材へヒアリングした内容を踏まえた学びの共有から始まりました。実際に転職を考えるまでのプロセスや、職場での悩みを聞く中で得た見解を共有しています。
3.外国人材の本音と建て前
現職の入社前に、自分の考えを伝えることができた人は62%、「半分くらいできた」人を合わせると97%と、想定以上に大きな数字となりました。満足が行くまで質問に答えてくれた面接官の印象が非常に高いという回答も得ています。
一方で、すべてを話せなかった理由として、「日本人と直接会話する機会が多くなかったため、会話スピードが早く聞き取れなかった」という声もありました。入社後のミスマッチを防ぐ意味でも、面接官の話し方も工夫が必要であると考えられます。
また、今の会社を退職する場合、その理由を本音で伝えられる人がいるか聞くと、86%が「いる」と高い割合を示した一方で、伝える対象を日本人社員に絞ると、48%と、半数が本音を伝えられないという結果でした。真因を探るのは難しいことが分かります。
4.転職検討時期について
転職検討時期については、なんと79%が入社1年未満であることがわかりました。半年以内でも58%を占めています。「キャリアや待遇面の不安」の声も大きく、特定技能1号の資格期間が限られていることで、検討までの期間が非常に短いと考えられます。
「仕事内容が想像と違った」という点も含めて、入社前に細かくすり合わせをすることでギャップが生まれることを防止できる課題だと考えられます。求人票での説明の仕方や相互理解の場のセッティングなど、入社前に企業が気をつける点もみえてきます。
5.売り手市場へのトレンドの変化
外国人材採用、特に特定技能の採用については、トレンドが変わりつつあります。2019年に特定技能制度が開始してから長らくは、求人を出せば候補者が殺到する状況が続いてきました。
そのため紹介会社も内定辞退によるクレームを防ぐため、候補者にまずは一社のみ紹介。選考結果が出てから次の企業推薦を進めるなど、単願の就職・転職活動が主流でした。
結果、「内定を出せば高い確率で候補者は内定承諾する」という状況が続いていました。しかし直近の動向では、併願した転職活動をして、複数の内定を獲得する特定技能の方が増えています。
優秀な人材に内定が集まる、売り手市場への移行が進んでいると考えられます。日本人採用と同様に、面接時に「求職者に選ばれる」という観点で対策を講じていくことが、優秀な人材確保に繋がると想定しています。
具体的な例として、複数の内定を獲得した方へのヒアリングでは、「キャリアアップへのサポート体制を含めて、1年間での成長ビジョンが見えた点」や、「寄り添って制度の説明をしてくれた点」を決め手として転職した方もいました。
6.特定技能2号試験合格者の転職事情
Lincでは、特定技能2号試験の合格者にも、インタビューを実施しました。本レポート上では公開できないのですが、試験に合格したのにも関わらず、転職を検討している状況です。なぜ、優秀な人材が転職を検討してしまうのか。その対策や心構えを含めた共有をしました。特定技能2号への移行サポートや、キャリア価値観へ寄り添う姿勢が、カギとして挙げられました。
7. グループディスカッションと懇親会
グループディスカッションや懇親会では人事の皆様で積極的に意見交換が行われました。実務面のお話しや、配属後フォローの中で出てきた課題などを率直にお話しいただくことで、非常に学びの多い場となりました。
例えば、店長に「疲れた?」と聞かれたので、素直に「疲れました」と答えたのに怒られた。という相談があったといいます。「空気を読んだ回答」を過度に求めることを避けるよう、受け入れ側への理解促進が欠かせません。
また、特定技能2号試験の難易度を調べずに、受けたい。とだけ希望する外国人材の社員に、親身に寄り添い、学習意欲を高めさせるための方法について共有いただいた人事の方もいました。
他にも、「仕事の捉え方」について、見解が一致する場面もありました。長く働くために最善の方法を考える人もいれば、短期目線で給料の良い会社へすぐ転職する人もいる。というのは、日本人であっても発生します。だからこそ、個人に向けた説得力を持った関わり方が大切なのです。
同じ言語で話せる方は、特定技能の方の境遇を理解しやすいので、説得力が増すというアドバンテージはあります。しかし「相手の考えを代弁しながら現場と本人との間を取り持つ」という事は、どの立場にある人事でも努力すればできます。
外国人材の苦しさに共感しながらも、現場責任者に話を聞き、うまく間を取り持つことで、現場の協力も得られやすくなった。という事例も参考にした方が多かったようです。
まとめ
今回のセミナーでは、外国人材へのアンケートやインタビュー内容をもとに、外国人材のキャリア形成や定着のためには、面接時から入社後のフォローまで、全ての工程で工夫が必要であることをお伝えしました。
特定技能2号の急激な拡大が見込まれる中で、優秀人材の採用・定着支援について、企業の皆様の意見交換をする機会も提供しております。今後も継続して開催を予定しておりますので、ご参加いただけますと幸いです。
株式会社Lincは今後も外国人材の採用・定着に取り組み、企業間交流の場を創出します。先進的な取り組みや好事例を企業の垣根を越えて共有し、外国人材が「日本に来て良かった」と感じられる環境づくりに取り組んで参ります。